刑事訴訟法の特徴(初学者向け)

1、刑事訴訟法とは

司法試験・予備試験の主要科目の1つに刑事訴訟法があります。略して「刑訴」といったりします。

刑事訴訟法とは、その名の通り、刑事裁判の手続を定めた法律になります。それだけでなく、犯罪の「捜査」についての手続も定めています。

犯罪があると警察官が考えた場合、警察官は犯罪を捜査します。犯人と疑われる人(被疑者といいます)の住居に入って証拠を探したり(捜索、いわゆるガサ入れ)、被疑者が逃げないように逮捕したりします。

そして、警察官は被疑者を捕まえた場合は、検察官に送致します(文字通り身柄を送ります)。検察官は、法的な観点から補充捜査をし、被疑者を起訴するかどうかを決める権限を有した公務員です。被疑者を起訴した場合、公判追行(裁判を進めること)するのも検察官になります。

検察官も法曹三者の一つですから、原則として司法試験に合格したものがなります。

2、刑事訴訟法の分野

(1)捜査、公判、証拠

大きく分けて、①捜査、②公判、③証拠 に分かれます。司法試験や予備試験の論文に出やすいのは、①捜査と③証拠です。①捜査は全般的に出ますが、③証拠は特に「伝聞証拠」という分野が出題されやすいです。

また、②公判が出るときは「訴因」という分野が出題されやすいです。

このように、司法試験・予備試験の刑事訴訟法の論文式試験では、出やすい分野が決まっています。

(2)理論と手続

刑事訴訟法では、どういう手続を行わなければならないかという手続きそのものと、理論的な部分の両方が問われます。

正確にいうと、司法試験・予備試験の論文では主に理論が聞かれます。一方、予備試験の短答では、手続きと理論の両方が聞かれます(ただ、短答では手続を問う問題の比重が大きいでしょう)。

例1)警察官Aは被疑者甲を逮捕した。何時間以内に検察官に送致しなければならないか?

→これは手続きの問題です。

刑事訴訟法208条は以下のようになっています。

第二百三条 司法警察員は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、又は逮捕状により逮捕された被疑者を受け取つたときは、直ちに犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げた上、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者が身体を拘束された時から四十八時間以内に書類及び証拠物とともにこれを検察官に送致する手続をしなければならない。

正解は48時間以内ですね。

例2)警察官Aは、甲が殺人を犯したとの疑いを持ったが、殺人で逮捕するほどの証拠を得られなかった。そこで、甲があんぱんを万引きしたことに目を付け、窃盗罪で逮捕し、殺人の取り調べをした。

→これは理論の問題です。殺人みたいな重大犯罪の取り調べをする目的で、比較的軽微な窃盗のような罪で逮捕し、殺人の取り調べばかりする、これは「別件逮捕」という問題です。

このような「別件逮捕」がそもそも許されるのか、理論的に考えていくことになります。

3、捜査で重要な「令状主義」と「強制処分法定主義」

(1)令状主義

警察官は、被疑者が逃げないように逮捕したり、被疑者の家にはいって証拠物を探したりできます。被疑者が嫌といってもできるので、「強制捜査」や「強制処分」といいます。しかし、強制処分は、重大な人権侵害を伴います。

そこで、逮捕や捜索などの強制処分をするためには、あらかじめ裁判官が発布した令状が必要だというルールになっています。このことを「令状主義」といいます。

令状主義は、刑訴法にも規定がありますが、憲法にも規定がある大切な原則になります。憲法の条文を挙げておきます。

第三十三条 何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。

→逮捕に令状が必要だと記載してあります。

第三十五条 何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第三十三条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。
2 捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。

→捜索に令状が必要だと記載してあります。

(2)強制処分法定主義

強制処分は重大な人権侵害を伴うので、刑訴法に規定のある「強制処分」しか行うことができません。刑訴法に書いてない強制処分をすることは許されないのですね。刑訴法の条文に書いてあります。

第百九十七条 捜査については、その目的を達するため必要な取調をすることができる。但し、強制の処分は、この法律に特別の定のある場合でなければ、これをすることができない。

「逮捕」や「捜索」は刑訴法の条文に書いてあるのですることができますが、GPS発信機を付けて、被疑者の所在を把握する「GPS捜査」は刑訴法に規定がないので、許されないことになります。

4、司法試験・予備試験における刑訴法学習のポイント

(1)刑事手続を意識する

刑事裁判を傍聴しないとなかなかイメージがわかないものですが、刑事訴訟法極めて実務的な法律です。捜査や裁判の手続を意識しながら、まずは手続を覚えましょう。

(2)条文を大切にする

全ての科目において共通ですが、刑事訴訟法も条文が大切です。予備校の講義を聞くとき、あるいは独学でテキストを読むときでも、たえず六法を手元において、条文を引きながら学習しましょう。

条文を徹底的に引いて、体に染み込ませるイメージです。司法試験・予備試験学習においては、条文は大切です。

(3)具体的な事例を意識する

刑事訴訟法の論文問題は、事例形式で出題されます。常に事例を意識して、このケースに法律をあてはめるとどうなるだろうと考えていくことが重要です。

(4)判例を意識する

事例を学ぶのに一番いい素材が「判例」です。また、判例が言っていること(規範)を覚える必要もあります。判例のエッセンスは、テキスト等に載っているので、初学者はテキスト等で学習しましょう。

少し学習が進んでくると、「判例百選」などの判例集で、少し長めに引用されている判例を読むことも、司法試験・予備試験のいい勉強になります。

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民事訴訟法の特徴(初学者向け)

1、民事訴訟法とは

(1)民事訴訟は何のためにあるか

司法試験・予備試験の主要7法に、民事訴訟法という法律があります。

民事訴訟法とは、「民事訴訟に関する法律です」とよく言われます。でもこの定義だと、なんにもわからないですよね。具体例に即して考えていきましょう。

Case)XはYに100万円を貸したが,Yは返してくれない。

Xさんはどうしますか?諦めますか?
あきらめたくない。Yに返せと強く言う。
でもYは返してくれない。

そんなときに、「裁判」というものがあります。

XはYに民事訴訟(民事裁判)を提起し,勝訴すると、「YはXに金100万円を支払え」という判決を獲得します。

この判決文は権威あるものなので、この段階で、事実上払う人もいます。

でも判決が出てもYが支払わない場合、どうすればよいのでしょうか。

(2)強制執行

判決が出ても、まだYが支払わない場合は,XがYの財産を見つけ,強制執行をします。(判決を債務名義とする強制執行といいます)。

ここまでいくと、Xは貸したお金を実際に回収できるわけですね。

(3)民事訴訟とは

このように,義務を履行しないものに対し,強制的に履行を実現するプロセスが民事訴訟といえましょう。

狭義(狭い意味)では、判決を得るまでを民事訴訟と言います。
広義(広い意味)では、強制執行まで含めて、民事訴訟といいます。

2、いろいろな民事訴訟法
(1)広義の民事訴訟法

広義の民事訴訟法には、以下のようなものが含まれます。

①民事訴訟法(狭義)
=民事訴訟法という名前の法律。民事訴訟の手続(判決を得るまでの手続)が規定されている。

②民事執行法
=強制執行について規定する法律

③民事保全法
=民事保全(判決が出るまで待てないからとりあえず何かする)について規定する法律

④破産法
=債務者(お金を借りている人など)が、払えなくなった場合の処理(破産)について定める法律

などがあります。この他にも、様々な法律があります。

(2)司法試験・予備試験の出題範囲

司法試験・予備試験の民事訴訟法では
①民事訴訟法(狭義)
②民事執行法
③民事保全法
が出題範囲です。

ただ、②③についてはあまり出ません。出題のほとんどが①民事訴訟法(狭義です。
また、予備試験の民事実務科目でも①~③の法律の知識は必要です。

④破産法は、司法試験の選択科目の1つになっております(実務では重要な科目です)。

司法試験・予備試験の出題の中心は、①民事訴訟法(狭義)ですので、これに絞ってブログ記事も書いていきます。

3、民事訴訟法の学習のコツ
(1)民訴は眠素(みんそ)

民事訴訟法を略して、「民訴」(みんそ)といいますが、これは「眠素」と揶揄されてきました。
司法試験・予備試験の勉強をしていると、民訴の勉強は本当に眠いのです。

その原因は、抽象的な規定であることと、(普通は)民事裁判を経験したことがないので、イメージがわきにくいことにあります。

(2)眠素を打破するためには

民訴の出題は、大きく分けて「手続」と「理論」に分かれます。
この2つのどちらをやっているか意識してください。

また、早めに全体を回して民訴の手続の流れをつかむことも重要です。
(民訴は最後までやらないと、最初の方の概念がわからないこともあります)

(3)民訴の手続について
手続は、主に予備試験の短答と、民事実務科目で出題されます。

この手続の流れを、条文を引きながら、体にしみ込ませてください。

司法試験(と予備試験)は、法曹になるためのライセンスです。
法曹にとって、民事訴訟の流れは必須です。
確かに眠いのですが、将来の法曹像を思い描きながら、頑張っていきましょう。

例えば、民事訴訟の始まりは、原告(訴えを起こす人)が被告(訴えを起こされる人)を明示して、訴状を裁判所に提出することです。

民事訴訟法
(訴え提起の方式)
第百三十三条 訴えの提起は、訴状を裁判所に提出してしなければならない。
2 訴状には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 当事者及び法定代理人
二 請求の趣旨及び原因

訴状には、請求の趣旨及び原因を記載しなければなりません。この記載がないと、最終的には裁判長に訴状が却下されてしまうことになります。

ここでいう請求の趣旨は、「どのような判決を求めるかの簡潔な記載」をいいます。例えば、「金100万円を支払えとの判決を求める」などです。

また、ここでいう請求の原因は、「請求を特定するのに必要な事実」を言います。金100万円を支払え、だけだと、何の話かわかりません。
何の話かわからないと、被告も裁判所も困ってしまいます。
そこで、「売買契約に基づき」などと書いてあげて、請求を特定するのです。

「請求の特定」というのは、司法試験・予備試験の学習において、すごく重要な概念ですから、なんとなくでいいのでイメージできるようにしてください。

(4)民訴の理論について

民訴の論文(司法試験・予備試験ともに)には、理論がでます。
民訴の理論は大変深いです。

また、他の法律科目と違い、通説判例だけでなく、反対説も知っておいたほうがよいという特色もあります(反対説については別の記事で解説します)。

1つだけ例を挙げると、民訴には「処分権主義」という大事な原則があります。
処分権主義とは、訴訟の開始、訴訟物(裁判の対象)の特定、訴訟の終了を原告の意思に委ねる建前をいいます。

民事裁判は、原告が裁判を起こさないと裁判になりません。裁判所が原告の意思を忖度して起こすことはあり得ません。
「訴えなければ裁判なし」と言ったりしますが、これは処分権主義の表れです。
また、原告が100万円請求しているのに、裁判所が120万円を支払えという判決を出すこともできません。原告の意思に反しているからです。これも処分権主義の話です。

(5)民訴の学習法

民訴も他の科目と同様、最初のうちは、講義を条文引きながら聞く(あるいはテキストを条文を引きながら読む)、論証を覚えることにつきます。
その際、どうしても民訴は抽象的なのですが、具体例をなるべくイメージするようにしてください。

予備・司法試験の学習法3~論証とは

 予備試験・司法試験の合格には、論文式試験を突破することが重要です。
短答式試験に合格しても、論文式試験にいつまでたっても受からず、涙を飲んで撤退する方も数多いです。

 そこで、この記事では、予備試験・司法試験突破の鍵となる「論証」について解説していきます。

1、論点とは

 それでは、論証とはいったい何なのでしょう。
これは、「法解釈」の存在と関係しています。
 本来、深い問題なのですが、かいつまんで説明していきます。

 法律を作るとき、本来は全てのケースをすっきり説明できるような法律にするのが理想的なのですが、全てのケースを想定して作ることは不可能です。
 また、法律である以上、ある程度抽象的に規定せざるを得ません。

 そこで、法律を作っても、「この場合どうなるの?」というケースが出てくるのです。
 一例を挙げましょう。

民法
第三条 私権の享有は、出生に始まる。

 人は、出生すると、権利を持てるわけです。
ここで、人はお母さんのおなかの中から生まれてくるわけですが、頭の先だけ出たら出生と言えるのか、全部体が出たら出生と言えるのか問題になります。
 前者を一部露出説、後者を全部露出説といいます。

 こんな細かい問題、くだらないと思われた方もいらっしゃるでしょう。

 しかし、出生のタイミングによって、相続なども変わってくるため、あなどれない問題です。

 そして、この問題は、法律の条文だけを見ても、よくわからないわけです。
 そこで、法律の条文を解釈して、一定の結論を導く必要が出てきます。
 このように解釈が必要な問題点のことを、論点といいます。

2、論証とは

 論証とは、この論点につき、理由を付けて、解釈の結論を示したパッケージのことです。

 先ほどの論点について、論証を記載します。

 民法3条1項は、「私権の享有は、出生に始まる。」と規定する。しかし、母体から一部露出した時を出生とするのか、全部露出したときを出生とするのか、法律の文言からは明らかではない。
 この点、解釈の明確性から、母体から全部露出したときを出生とするのが妥当である。

 これが論証です。
 全部露出説という結論を明示しています。
 また、理由付けも「解釈の明確性」とコンパクトに示しています。

 若干補足説明をしますと、一部露出説だと、頭の先がでたらいいのか、首まで出たらいいのか、基準があいまいになってしまします。そこで、全部露出説の方が基準が明確だろう、そういうことです。

3、なぜ論証を覚えなければならないのか

 それでは、なぜ、司法試験・予備試験の論文式試験突破には、論証を覚えることが必須なのでしょうか。

 まず、論証を1から考えるのは、時間がないということがあげられます。
司法試験・予備試験の論文式試験を解くにあたっては、時間が思ったより足りないです。
 そこであらかじめ用意できることは、用意しておく必要があります。

 料理で言えば、「下ごしらえ」です。下ごしらえしているから、料理をスピーディーにだせます。
 論証も同じことです。

 まだ、論証を一から考えるのは大変ですし、試験の現場では思いつかないこともあります。
そこで、論証を論文のパーツとして、用意していくのです。
 論証をいくつか組み合わせて、論文を作成することになります。

 そして、試験の現場では、論証でカバーできない点を考えることに時間を使うわけです。

4、論証の覚え方

 論証は、一言一句同じものを覚える必要はありません。
法律学は、論理が大事なので、ロジックが通じていれば、言い回しを変えたりしても問題ありません。
場合によっては、結論や理由付けが違っても問題ないです。

 予備校の講座を取ると、たいてい論証集が付いてきます。
また、市販の論証集もあります。

 それを読んで、まず理解をする。
(前提として、法律の理解は必要なので、予備校の入門講座を取るか、独学なら基本書を読んでおきましょう)

 その上で、自分が覚えやすい形にアレンジする(文言の言い回しなどを変えます)

 そして、キーワードを中心に覚える。

 論証を見ずに、チラシの裏などに書いて再現できるか確認する。

 このように論証を覚えていきましょう。

5、司法試験・予備試験の中で一番大変な作業

 司法試験・予備試験の勉強の中で、一番大変な作業が、この論証を覚える作業です。
ここで挫折する方も多いです。

 しかし、論証を覚えないと、論文が書けません。
 将来の法曹像を思い浮かべながら、頑張っていきましょう。

商法の特徴(初学者向け)

ここでは司法試験・予備試験に必要な主要7法科目のうち、商法という科目の特徴を見ていきましょう。

1、司法試験・予備試験の商法とは

司法試験・予備試験には商法という科目があります。
司法試験の論文式試験と、予備試験の短答・論文式試験で出題される科目です。
ビジネスローをやるには必須の分野の商法。しかし、実際のビジネスの場面をイメージしにくいのもあって、苦手な受験生も多い科目です。

2、商法とは
(1)広義の商法
まず、広い意味の商法(広義の商法)という概念があります。
これは、商人や商行為に関わる法、くらいのイメージを持っておきましょう。
広義の商法には主要な法律だけでいっても、次の5つがあります(もちろんその他にもあります)。

①(狭義の)商法
② 会社法
③ 手形小切手法
④ 保険法
⑤ 金融商品取引法

(2)司法試験・予備試験の出題範囲

司法試験・予備試験の出題範囲は、
①(狭義の)商法
② 会社法
③ 手形小切手法
となっておりますので、④と⑤を先に解説しておきます。

(3)司法試験・予備試験に出ない保険法と金商法

④保険法は、私保険、つまり民間の会社が運営する生命保険や損害保険の規律をする分野になります。私保険が社会の隅々まで浸透している現代社会においては(弁護士保険なんていうのもあります)、極めて重要な法分野です。
但し、特殊な考慮を要する部分もありますので、司法試験・予備試験の出題範囲外となっております。

⑤金融商品取引法(金商法)とは、かつて「証券取引法」という名前の法律でした。株式やその他の金融商品についての規制や、企業情報の開示(決算書の開示等)について定めた法律です。
これもビジネスローをには重要な法分野なのですが、特殊なため、司法試験・予備試験では出題されません。

司法試験・予備試験は、あくまで基本的な法分野を問う試験なのですね。

3、狭義の商法とは
(1)商法という名前の法律
「商法」という名前の法律を、狭義の商法といいます。
商法は、商人や商行為について定めた法律で、民法の特則を規定しています。
例えば、商法512条にはこのような規定があります。

(報酬請求権)
第五百十二条 商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求することができる。

民法の世界では、契約がないと報酬を請求できませんが、商法の世界では、商人は契約がなくとも相当な報酬を請求できます。次のCaseを見てみましょう。

Case1)Yさんは建設業者Xに家の修理を依頼しました。YとXは契約交渉をしていましたが、正式な契約書は交わしていません。Xは、Yに「急ぎの工事だから」と言われて、契約書を交わさないまま修理をしてしまいました。
XがYに報酬を請求すると、Yは「正式な契約が成立していないから」と言って、お金を支払おうとしません。

こんなときに、XはYに商法512条に基づいて、報酬を請求できるわけです。

このように、商法は、民法では規定がない部分を補っています。

(2)狭義の商法の分野
商法は
・商法総則
・商行為
・海商

と3つの分野からなっております。海商は、特殊なため司法試験・予備試験では出題されません。また、かつては会社法と保険法も商法の中に規定がありました。

商法総則と商行為は、民法の規定を、商売用にアレンジしたというイメージを持っておけばよいでしょう。

4、会社法とは
(1)会社法の概要
「会社法」という名前の法律が、株式会社を中心とする会社について規定しています。
民法の特別法ですが、会社組織というものを扱うので、民法と少し視点が異なります。

代表例の株式会社で考えてみましょう。

Case2)Aさんは、これからはフカヒレラーメンが流行ると考え、フカヒレラーメンチェーンのラーメン店をたくさん作りたいと考えています。しかし、Aさんは自己資金がたくさんあるわけではないので、たくさんの人からお金を集めたいと考えています。また、何かあったときにAさん個人の財産が取られるのは嫌だと考えています。

上記のAさんのように、多数の人からお金を集める(出資してもらう)のに適しているのが株式会社です。

例えばBさんに1億円出資してと言うと断られるかもしれません。

しかし、1株1万円だとして、Bさんに1株買ってよと言うと、1万円くらいならOKしてくれる可能性はあります。
1万円の株を1万株発行し、引き受けてくれる人を探せば、Aさんは1万円を手に入れることができます。
そして、1株を引き受けたBさんは、1万分の1の経営権を持ちます。なぜなら、株主は会社の実質的なオーナーと言えるからです。
会社に利益があれば、株主は毎年配当金を受け取ることができます。

また、会社は法人と呼ばれるものです。例えば「フカヒレラーメン株式会社」という会社を設立したら、その会社は、法的には、Aさんと別の人です。
フカヒレラーメン株式会社の財産はAさんの財産ではありません。逆にいうと、フカヒレラーメン株式会社の負債はAさんの負債ではありません。フカヒレラーメン株式会社にお金を貸した銀行は、フカヒレラーメン株式会社にだけ返済を請求でき、Aさんには請求できません。

(2)会社のステークホルダー
(1)で述べたように、株主は、会社の実質的経営者です。しかし、株主は(通常は)経営の能力もないし、また、配当金がもらえればいいや、経営なんか興味ないと思っていることもあるでしょう。

そこで、取締役という経営者が、通常の会社の経営をします。
株主は、(原則として)年に1度の株主総会で、本当に大切なことだけを決めるのです。これを、「所有と経営の分離」といいます。会社の所有者(オーナー)である株主は、原則経営をしないということです。
他に、会社を監査する「監査役」等を置くこともあります。

ここで、ステークホルダーとは利害関係人のことをいいます。会社のステークホルダーは、まず、会社そのもの(法人なので経営者とは別人格です)、株主、取締役等がいます。また、会社にお金を貸したりしている「債権者」も重要なステークホルダーです。

(3)会社法の事例
司法試験・予備試験の会社法では、ステークホルダー同士のトラブルがよく出題されます。

Case3)A社の代表取締役Bは、株主総会の決議を経ずに、友人のCに、A社の株100株を総額100円で発行しました。なお、当時のA社の株価は1株1万円です。この株式発行は、Cに特に有利な価額で(有利発行といいます)行ったものなので、本来、株主総会決議が会社法上必要なのです。しかし、株主総会決議がありません。
当該株式発行は有効でしょうか。

この問題の答えは複雑なので、ここで記載はしませんが、A社、代表取締役B、友人のC、そして他の株主と、複数のステークホルダーの利害が絡むわけです。また、上記Caseには、株主総会決議を経ていないという会社法違反と、他の株主とCを不平等に扱っているという問題の2点が存在します。

5、手形小切手法とは
(1)手形小切手法の概要
司法試験・予備試験では「手形法」と「小切手法」が出題されます。手形には約束手形と為替手形の2種類があります。小切手法は小切手というものについて規定しています。
司法試験・予備試験で出るのは主に約束手形なので、約束手形について解説していきます。

(2)約束手形とは
Case4)YはXに工事を1000万円で発注しました。Yは手元に現金がなかったので、60日後に支払日を定めて、Xに約束手形を振り出しました。Xは手形をAに800万円で裏書譲渡しました。

Aさんは、支払日に(Yの指定する)銀行に手形を持っていけば1000万円を払ってもらえます。

このように、一定の期日に一定の金額を支払ってもらえる証券を約束手形といいます。

約束手形の本質は、借金なのですが、証券にしているので、他人に譲ったりできます(流通性を高めると言います)。

6、司法試験・予備試験での商法の勉強について
(1)まず会社法
司法試験・予備試験の商法は、会社法が出題の中心です。
ですので、まず会社法をしっかりおさえましょう。

(2)会社法は条文が大切
会社法は、比較的新しい法律なので、条文がしっかりしています。
そこで、まずはテキストを条文を引きながら読み、制度を理解しましょう。
予備校の講義でも、六法で条文を引きながら進みます。

(3)論点
その上で、論証というものを書けるようにします。論証は、司法試験・予備試験の答案を作る上での部品のようなものです。

(4)他の科目について
狭義の商法や手形小切手法は、短答では少ないながら出題されますし、論文でも出る可能性はあります。
ただ、会社法に比べると重要度が下がりますので、あっさりと重要な条文や論点を中心に勉強しましょう。

(5)苦手な人が多い
会社法は、ビジネスの場面がイメージしにくいですし、技術的な法律であることもあって、司法試験・予備試験受験生にとって苦手な科目なようです。
しかし、逆に言えば出題内容は単純です。得意科目にして、他の受験生に差をつけやすい科目でもあります。ぜひ得意科目にしてください。

社会人が司法試験・予備試験に合格するためには

働きながら司法試験・予備試験に合格する。
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でも、実際に合格している方もいます。

社会人が司法試験・予備試験に合格するためにはどうすればよいでしょうか
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ぜひご覧ください。

なお、LEC東京リーガルマインドには特設ページがあります。

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民法最初にこれだけは【民法解説動画】

民法は、身近なテーマを扱い、面白い法律ではありますが、苦手な人も多い科目です。

司法試験(予備試験も含みます)では、民法が天王山とか、民法帝国主義とか言われます。

実務上も重要な科目ですし、なにせ量も多いです。

さらに、民法は、最後まで学習しないと、最初の方がわからない構造になっています(パンデクテン体系)。

そこで、民法の最初に、民法の途中で出てくる重要概念を学習しておくと、学習がスムーズにいきます。

私が重要だと思う3つの知識を、ぜひ民法を学習する前に身に着けてください。動画で解説します。
関連する民法の条文は、埋込動画のすぐ下に記載してあります。
司法試験・予備試験の勉強には、条文を読むことが重要であり、必要不可欠です。
民法の条文を併せて読むようにしまよう。

1、民法セミナー導入編 そもそも民法ってなに?

<契約の成立についての条文>
(契約の成立と方式)
第五百二十二条 契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。
2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。

<債務不履行の際、債権者が取ることができる3つの手段についての条文>
(履行の強制)
第四百十四条  債務者が任意に債務の履行をしないときは、債権者は、民事執行法その他強制執行の手続に関する法令の規定に従い、直接強制、代替執行、間接強制その他の方法による履行の強制を裁判所に請求することができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
2  前項の規定は、損害賠償の請求を妨げない。

(債務不履行による損害賠償)
第四百十五条  債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

(催告による解除)
第五百四十一条  当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。

2、民法セミナー導入編 二重譲渡

<二重譲渡に関する条文>
(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
第百七十七条  不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法 (平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

3、民法セミナー導入編 差押え、抵当権、保証

<保証と抵当権に関する条文>
(保証人の責任等)
第四百四十六条  保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。
2  保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。
3  保証契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。

(抵当権の内容)
第三百六十九条  抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。

民法の勉強はここから始めましょう。

そして、民法を得意にして、予備試験・司法試験を突破しましょう。

刑法の特徴(初学者向け)

ここでは司法試験・予備試験に必要な主要7法科目のうち、刑法という科目の特徴を見ていきましょう。

1、刑法とは?
(1)教科書的な理解

刑法は、犯罪の成立要件と刑罰について定める法律のことをいいます。これが教科書的な説明です。わかったようなわかんないような、そんな印象を受けると思います。

(2)犯罪論と刑罰論

刑法は、講学上(学問上)、犯罪論と刑罰論に分類されます。

犯罪論は犯罪の成立要件と刑罰、すなわち何をするとどんな刑罰が科せられるか、という部分になります。

例えば、他人の物を盗めば窃盗罪という罪になりますよね。

これは刑法235条の規定があります。

(窃盗)
第二百三十五条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
 「他人の財物を窃取した」が犯罪の成立要件で(厳密にはもっと議論がありますが、とりあえずここではこれが要件としておきます)、「十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金」が科せられる刑罰です。
 ただ、他の科目と同じく、条文だけでは解決できない問題があり、そこは条文(法律)の解釈が必要になってきます。司法試験や予備試験で重要な法解釈ですね。
例えば、AさんがBさんから現金1万円入りの封筒(封緘がしてあります)を受け取りましたが、Aさんは封筒を空けて1万円を取り出し使ってしまいました。
 他人から預かったものを使った場合は、横領罪になります。
一方、他人の物を盗んだ場合は窃盗罪です。
 先ほどのケースは横領か、窃盗かという議論です。
 結論を言いますと、封筒ごと自分のものにした場合は横領罪、中身を空けて中身だけ自分のものにした場合は窃盗罪とされます。
 中身を空けることは、頼まれた範囲を超えるからです。
 まず条文で何が犯罪となりどういう刑罰を科せられるかを覚え、それから個々の論点の解釈をマスターすることが、司法試験・予備試験の合格にとっては重要です。
(3)刑法総論と刑法各論
 (2)で検討した、「窃盗罪」「横領罪」など個別の犯罪を扱う分野を、講学上「刑法各論」と呼びます。
      一方で、犯罪に着手したが結果が発生しなかった場合を「未遂犯」といいます。刑が減刑されることがあります。
また、相手に殺されそうだったので、自分の身を守るために相手を殴った場合「正当防衛」となり、無罪となります。
「未遂犯」や「正当防衛」などは、様々な犯罪に共通して問題になるので「刑法総論」という分野でまとめて扱います。司法試験・予備試験の学習においては、まず「刑法総論」を学習した後、「刑「刑法各論」を学習します。(4)刑罰論
どのような刑罰が刑法に規定されているかを扱うのが刑罰論です。
例えば、日本で採用されている刑罰は、(刑の種類)
第九条 死刑、懲役、禁錮こ、罰金、拘留及び科料を主刑とし、没収を付加刑とする。

となります。また、懲役刑を宣告されても、すぐに刑務所に行かなくてよい制度、それを「執行猶予」といいます。
懲役3年、執行猶予5年の判決を受けた場合は、5年間、何も犯罪を犯さずに過ごせば、刑務所に行かずにすみます。そして、5年間、無事経過した場合は、刑の言い渡しは効力を失います。

なお、刑務所に入れた場合、どのような効果があるかを探求したり、よりよい刑罰制度を考えるのは、刑事政策(刑事学)という分野になります。
かつては司法試験の選択科目となっていた時代もありますが、現在は試験範囲外です。但し、法律学の分野としては重要なものになります。

2、犯罪論の基礎
(1)罪刑法定主義

罪刑法定主義とは、何が犯罪とされ、どのような刑罰を科せられるかを、あらかじめ法律の明文で、明確に、定めておかなければならない原則をいいます。

逆に言うと、国民がどんなに処罰すべきだと思っている行為でも、法律で処罰することが定められてなければ、処罰できないということです。

罪刑法定主義の要請から、刑法では、条文が非常に大切になってきます。

(2)体系

では、条文の要件に該当すれば即処罰されるのか。

物騒な話ですが、AさんがBさんを殺したとします。Aさんの行為は、殺人罪の要件に該当します。

(殺人)
第百九十九条 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。
 でも、AさんはBさんから殺されそうだから、Bさんを殺したとします。正当防衛として無罪となる余地がありそうです。
 そこで、刑法では、条文の要件に該当し(構成要件に該当するといいます)、かつ違法性があり(正当防衛の場合は違法性がないといいます)、かつ責任がある(例えば幼児は、自分が何をしているかわからないので責任がないといいます)場合のみ処罰されます。
 つまり、人を処罰するためには、構成要件該当性、違法性、責任の3つが必要なのです。
 但し、人を殺した場合は、原則は違法で、正当防衛みたいな例外的事情がある場合のみ処罰されないことになります。責任も原則あると考えてよいでしょう。
 そこで、犯罪の成立要件は、①構成要件該当性、②違法性阻却事由(違法性を失わせる事由、正当化事由ともいいます)がないこと、③責任阻却事由がないこと
 になります。
※あくまで通説的な見解からです。他の考え方もありますが、司法試験・予備試験においてはこの考え方で十分です。

(3)構成要件該当性

では構成要件該当性についてみていきましょう。

構成要件該当性とは、客観と主観に分かれます。

客観は、実行行為があり、結果が発生し、実行行為と結果との間に因果関係(つながり)があることです。

例えば、AさんがナイフでBさんの胸を突き刺し、Bが死亡したとしましょう。

実行行為が「AさんがナイフでBさんの胸を突き刺したこと」、結果が「Bが死亡したこと」です。そして、つながりがあることは明白ですので、因果関係もあります。

構成要件該当性の客観面は満たされた(要件に該当する)と言えます。

※言葉遣いが難しい!と思った方も多いでしょう。法律学では特有の言葉遣いが多いですが、慣れていって下さい。

構成要件の主観面ですが、それは故意があることです。

殺人の場合は「殺意」になります。

Aは、ナイフでBの胸を刺すくらいですから、通常は殺すつもりがあったと言っていいでしょう。

※細かい議論や過失犯などもあるのですが、ここでは割愛します。

(4)違法性阻却事由

正当防衛などがあれば、違法性が阻却され(違法性がなくなるということです)犯罪不成立になります。

先ほどの例では特に違法性阻却事由はなさそうです。

(5)責任阻却事由

刑事未成年(14歳未満)であったり、重度の精神病で責任能力がない場合なども犯罪不成立となります。先ほどの例では特になさそうです。

ここまでくれば、Aに殺人罪が成立するとなります。

刑法では、このように体系的思考が重要になってきます。

(6)修正された構成要件

複数の人で犯罪を行う「共同正犯」や「未遂犯」などは構成要件が修正されます。ここでは難しい話なので割愛します。

3、短答試験

ここでは、平成31年度の刑法総論の短答式試験の問題を見てみましょう。

〔第5問〕(配点:3)

正当防衛に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものを 2個選びなさい。(解答欄は,[№6],[№7]順不同) 1.当然又はほとんど確実に侵害が予期された場合において,単に予期された侵害を避けなかっ たにとどまらず,その機会を利用して積極的に相手方に対し加害行為をする意思で暴行に及ん だときは,その暴行行為については,正当防衛が成立する余地はない。

2.いわゆるけんか闘争において相手方に対してした暴行行為については,正当防衛が成立する 余地はない。

3.手拳で殴る素振りをしながら「お前殴られたいのか。」と言って近付いてきた相手方を,殺 傷能力のある刃物を構えて脅した場合,その脅迫行為については,正当防衛が成立する余地は ない。

4.自己に対しナイフを示して脅している相手方に対し専ら攻撃の意思で暴行に及んだ場合,そ の暴行行為については,正当防衛が成立する余地はない。

5.財産的権利を防衛するために相手方の身体に暴行を加えて傷害を負わせた場合,その暴行行 為については,正当防衛が成立する余地はない

このように、具体的事例に刑法(の条文や判例や通説的解釈)をあてはめるとどのような結論になるかが聞かれます。

しっかりと、講義を聞いたりテキストを読み、条文と解釈を身に着けることが重要です。また刑法は、学説の対立が激しいので、有名な学説については押さえておくほうが有用です。

4、論文試験

実際の司法試験・予備試験の論文の問題は長いので、簡単にした問題を考えていきましょう。

例)甲は、乙の妻である。乙は、甲の連れ子Aに暴行を加えていたが、甲は乙との関係が途切れるのが嫌で見て見ぬふりをしていた。ある日、乙は、Aに暴行を加えていたところ、甲はまたかと思ってみて見ぬふりをしていた。すると、Aが突然「ぎゃー」という声を上げて死んでしまった。甲の罪責について論ぜよ。

なかなか考えたくない凄惨な話ですが、法律は現実を扱う問題なので、このような問題がしばしば出てきます。

甲が積極的にやった行為はないのですが、乙の行為を止めなかったという点に着目しましょう。

止めないことで犯罪が成立する場合があります。「不作為犯」という論点です。詳しい解説はここでは控えますが「不作為犯」という論点を論じていくことになります。

5、司法試験・予備試験の中の刑法の位置づけ

・刑法は、刑事系科目の基礎となる科目です。刑事訴訟法は刑事裁判の手続きを扱う法律ですので、刑法の学習が前提となります。

・刑事系科目には特有の思考方法があります。刑事系科目、特に刑法は細かいです。

・ただ、一度マスターしてしまうと、法改正も多くはないですし、答案が書けるようになります。

・試験との関係では、具体的事案を処理するのが大切になります。

私は刑法はどちらかというと苦手でした。皆さんは、刑法の特徴を押さえ、ぜひ得意科目にしていただきたいです。

司法試験・予備試験では、刑法は得意な人と苦手な人がはっきり分かれる気がします。

6、予備校か独学か

司法試験・予備試験の予備校に通うと効率よく刑法を学ぶことができます。特に、「本にあまり書いてないポイント」を講師が教えてくれるのがよいですね。

一方、独学はお金が安いという特徴があります。

刑法を独学するためには、最初の1冊は学者の本(基本書)ではなく、予備校が司法試験・予備試験受験のために出している「予備校本」がお勧めです。

刑法は、学者によって考え方が全然違いますし、その考え方の違いが学者の本は反映されています。予備校本はフラットな考え方で書かれているので、まず予備校本で学んだ方が効率がよいです。そして、刑法総論から学びましょう。

予備校本では呉先生の本がわかりやすいです。

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司法試験・予備試験には定番のC-Bookもおすすめです。

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民法の特徴(初学者向け)

1、基本7法

本記事は、司法試験・予備試験の各科目の特徴を簡単に解説していきます。

予備試験・司法試験ともに、出題の中心は基本7法と呼ばれるものです。基本7法とは、民法・刑法・憲法・商法・民事訴訟法・刑事訴訟法・行政法になります。

2、民法とは?

(1)教科書的な理解

民法を教科書的に解説すると、私人間の権利義務と家族関係について定めた法ということになります。

これだけ聞いても、頭の中に???が並ぶだけでしょう。

(2)契約を中心に考える

民法で扱う典型的な場面は、契約です。(家族関係もありますが、それは少し横に置いておきましょう)。

例えば、AさんがBさんにマンションの一室を貸したが、Bさんが無断でCさんに又貸ししている。AさんはBさんにマンションを返せと言えるのか。

これは立派な民法の問題です。

民法の条文にはこのような規定があります。

第六百十二条 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
2 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。
 賃借人であるBさんが賃貸人であるAさんに無断で、Cさんに又貸しした場合は、AさんはABの賃貸借契約を解除(解約)できるということです。

(3)ルールの修正

ただ、法律の条文上は、無断で又貸しした(無断転貸といいます)場合は、常に解除できるように読めますが、判例がこのルールを修正しています。

それは「信頼関係破壊の法理」というものです。
例えば、Bさんが自分の成人している息子Cに貸した場合。

なぜ、無断転貸がいけないか。

それは、不動産の貸主は、借主を見て、「この人なら大丈夫だろう。家を大切に使ってくれるだろう。そして家賃もきちんと払ってくれるだろう」と考えて貸しているのです。

ところが、全然知らないCさんに又貸しされてしまえば、Cさんが家を汚したり、壊してしまうかもしれません。

そこで、無断転貸がされた場合には、貸主は賃貸借契約を解除できるようにしたのです。

ここで、Bさんが息子Cに貸した場合。BさんとCさんは一心同体と言えなくもないです(もちろんケースバイケースになります)。そして、BもCに貸さざるを得ない状況があるかもしれません。

そこで、Bさんが息子のCさんに貸した場合のように(家族に使用させることは予想できますよね)、貸主Aと借主Bの信頼関係を破壊しない場合は、AはAB間の賃貸借契約を解除できないとしたのです。

これを信頼関係破壊の法理といいます。

3、原則と例外

このように、条文を機械的に適用した場合に不都合が起こる場合、解釈で条文ルールを修正することがあります。これが、司法試験・予備試験でよく出題される「論点」というものです。

まずは、条文に書いてある「制度」を理解し、不都合があるときの「解釈」を学ぶ。これが民法学習において必要です。

4、契約自由の原則と任意規定・強行規定
(1)契約自由の原則

ここで、民法は契約について定めていると言っても、契約は「契約書」で定めるんじゃないのか?と思った方もいらっしゃると思います。民法の規定と「契約書」の内容について考えていきましょう。

民法の世界では、「契約自由の原則」というものがあります。これは、当事者任意で(つまり脅されたり騙されたりすることなく)契約をする場合、どんな内容の契約も自由にできるという原則です。

(2)任意規定(任意法規)

しかし、契約で決めなかった事項についてはどうなるでしょうか。契約で定めなかったことで、民法に規定がある場合は、民法の規定どおりになります。この規定のことを任意規定と呼びます。

例えば、お金を貸したが、返済期限を定めなかった場合、貸金はいつ返ってくるのでしょうか。
これは、民法の任意規定により「催告後相当期間経過時」、つまり返せと言ってからある程度の期間が経ったときに返済義務が生じます。

(3)強行規定(強行法規)

では、契約でどんなことを定めてもよいのでしょうか。実は、民法その他の法律の「強行規定」に反してはならないとされます。強行法規ともいいます。

例えば、契約自由と言ったって、あまりに高い利息でお金を貸すことは、利息制限法という法律で禁じられています。つまり、利息制限法の利息制限の規定は強行規定になります。元本の額が10万円未満だと、最高利息は年2割となります(利息制限法1条1号)。

いわゆる「トイチの利息」(10日で1割の利息)は違法となります。

(4)まとめ

契約で定めなかった時に使われるのが任意規定です。一方、強行規定に反する契約は定めても無効になります。

任意規定と強行規定について学ぶのが民法と言っても、民法の中心が契約である以上は、過言ではありません(もちろん民法には家族法など他の規定もあります)。

5、民法の短答問題

予備試験の民法短答問題を見てみましょう。

〔第1問〕(配点:2)
制限行為能力者の行為であることを理由とする取消しに関する次のアからオまでの各記述のう ち,誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。 (解答欄は, [№1])
ア.未成年者がした売買契約は,親権者の同意を得ないでした場合であっても,その契約が日常生活に関するものであるときは,取り消すことができない。
イ.成年被後見人がした売買契約は,成年後見人の同意を得てした場合であっても,その契約が日常生活に関するものであるときを除き,取り消すことができる。
ウ.被保佐人がした保証契約は,保佐人の同意を得てした場合には,取り消すことができない。
エ.被補助人が,補助人の同意を得なければならない行為を,その同意又はこれに代わる家庭裁判所の許可を得ないでしたときは,その行為は取り消すことができる。
オ.成年被後見人の行為であることを理由とする取消権の消滅時効の起算点は,成年被後見人が行為能力者となった時である。

1.ア イ 2.ア オ 3.イ ウ 4.ウ エ 5.エ

これは令和元年度の予備試験民法の第1問です。司法試験もほぼ同じ問題です。
答えは2番です。このように、民法の短答式試験は、条文や判例を具体的事例に適用して結論を出すという問題が多いです。

対策としては、講義やテキストで、民法の条文や判例を中心に制度を学ぶ、典型的な解釈を身に着ける、具体的事例にたくさん触れる、問題演習もたくさんする、に尽きます。

6、民法の論文問題

実際の予備試験や司法試験の問題は長いので、もっと簡単な論文問題を見てみましょう。

例)AはBに車を売ったが、当該売買はBの詐欺により行われたものであった。Bは当該車をCに転売した(車はCの手元にある)。その後、AはAB間の売買契約を取り消した。CがAB間の詐欺の事実を知らなかったし、知ることもできなかった時、AはCに車の引き渡しを請求できるか。なお、当該車は、未登録であることを前提にせよ。

雰囲気としては、予備試験や司法試験にはこんな問題が出ます。実際にはもっと長文の事例で、複雑なものが出ます。

これに民法の条文を適用し、解釈して結論を出していくということです。

7、司法試験・予備試験の中の民法の位置づけ

(1)典型的な解釈の技法を学ぶ場である

まず、司法試験・予備試験の中で、民法は最重要科目といってよいでしょう。理由としては、まず法律の解釈の基本的なテクニックが、民法にたくさんあるからです。ここで他の科目にも通用する解釈の技法を学びましょう。

(2)量が一番多い

次に、民法は最も量が多いということが挙げられます。量が多い科目を早めに制服することは、司法試験・予備試験の短期合格を狙うコツです。

(3)商法・民事訴訟法・行政法を学ぶ前提となる

さらに、商法や民事訴訟法、行政法などを学ぶためには、まず民法を学ぶ必要るということです。商法は民法の特別法なので、先に民法を学ぶ必要があります。民事訴訟法も、民法で定められた権利義務を実現する、民事裁判の手続に関する法律なので、先に民法を学んでおく必要があります。
行政法も、民法との対比をしなければ理解しにくい部分がありますので、民法先に学んでおく必要があります。

 

8、民法に興味を持たれた初学者の方へ

(1)まずは動画で最初の一歩を踏み出してみましょう

民法最初にこれだけは【民法解説動画】

(2)本格的な民法講義

もう少ししっかり司法試験・予備試験の民法を学びたい方は次の動画がお勧めです。司法試験の入門講義の第1回になります。3時間みっちりと、司法試験・予備試験レベルの講義がなされてます。

(3)独学で民法を学ぶ
独学で民法を学ぶことも可能ではあります。司法試験・予備試験のテキスト(いわゆる予備校本)を使ってもよいですし、学者の先生の本(いわゆる基本書)を使っても学べます。

司法試験・予備試験には定番の予備校本である「試験対策講座」。ただ、少し価格が高いです。

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予備・司法試験の学習法5~判例の重要性

1、判例とは

予備試験、司法試験の学習で重要なものに、「判例」があります。

判例とは、裁判において具体的事件における裁判所が示した法律的判断のことを言います。

もう少し具体的に(予備試験・司法試験の勉強に合致するように言うと)、論点に対する結論と理由付けを言います。

論点とは、法律の解釈に争いがある点を言います。

例えば、刑法に強盗殺人罪という罪があります。

強盗が人を殺した罪です。当然ですが、法定刑は、死刑又は無期懲役という重い罪になります。

一方、刑法には「未遂」という概念があります。犯罪の結果が生じないときは、刑を減刑できるという規定です。

 

では、強盗殺人罪の未遂とは、強盗、すなわち財物の奪取が未遂なときをいうのか、それとも殺人の結果が未遂、すなわち人が死ななかった時をいうのか、という争いがあります。

これは法律の文言を眺めてもわからないからです。

これが論点になります。

判例は、この論点については「殺人の結果が未遂」であると述べます。

その理由付けは判例では必ずしも定かではありませんが、推定すると

「強盗殺人罪が重く処罰されるのは、人の生命を侵害するからであり、そうすると人の生命を侵害しなかった点を重視して未遂犯を決するべきだから」となるでしょう。

これが理由付けです。

 

2、判例は司法試験・予備試験の学習において大切なのか

これは大切としか言いようがありません。まず短答式試験では、判例の結論(場合によっては理由付け)が聞かれます。

また、論文でも判例の見解に従って書くことが求められることがあります。

司法試験・予備試験の学習にとっては、大事としか言いようがありません。

3、判例集をテキストの他に用意すべきか?

司法試験・予備試験の学習にとってはこちらの方が重大な問題です。

テキスト(予備校が出しているものや、学者が出しているいわゆる基本書を含む)は、判例の結論と簡単な理由付けくらいは載っています。

しかし、判例というのは本来事案も長いし、理由付けも長いことがあります。

そこで、その長い判例を読むために、テキスト以外に判例集が必要かという議論があります。

私は3つのグループに分けて考えましょうと言います。

(1)憲法・行政法(公法系)

→最重要

憲法・行政法に関しては判例集は必須です。なぜなら、短答式試験では、テキストの要約された判例の理由付けだけでは解けない問題が出るからです。判例集で長く事案や理由付けをマスターしましょう。

また、憲法や行政法は、法律の条文ではっきり規定されていることが少なく、判例が法律の穴を埋めています。その意味でも判例は重要です。

さらに、憲法や行政法の論文式試験では「あてはめ」が重要です。その「あてはめ」のお手本になるのが判例です。

(2)民事訴訟法・刑事訴訟法

→まあまあ重要

この2科目はまあまあ重要です。民事訴訟法や刑事訴訟法は、事案ごとに特別な事情があり、その事情を踏まえないと判例の結論が理解できないからです。また、「あてはめ」のやり方を見るのも重要です。

(3)民法・刑法・商法

→重要度は下がる

この3科目は、判例集自体の重要度は下がります。注意していただきたいのは、判例自体は重要ということです。ただ、この3科目は判例の事案や理由付けを長々問われることは少ないので、テキストでも十分判例をマスターできるということで、判例集はあまり重要ではないということになります。

この3科目に関しては、判例集は事案を見る、すなわち事例問題集のように使うのがよいでしょう。

なお、市販の判例集はいろいろありますが、やはり定番の判例百選が私はおすすめです。定番でもありますし、解説は司法試験・予備試験を意識して書かれています。

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ぜひ判例をマスターして、予備試験・司法試験に合格しましょう。

予備・司法試験の学習法4~実際になにをするか

この記事では、司法試験・予備試験に合格するために、実際に何をすればよいかを書いていきます。まず、予備試験に合格(又はロースクール修了)しなければ、司法試験を受けることさえできないので、予備試験の学習法について述べます。

1、学習期間

法律を全く学んだことがない方が、予備試験に合格するには、2年かかると思ってください。もちろん、法律の知識が多少ある方や、要領が良い方はもっと短期間で合格できるかもしれません。

ただ、通常は(学生なら学業、社会人なら仕事以外のほとんどを学習に注ぎ込んだとしても)2年はかかります。

大変だ、と思われた方もいらっしゃるでしょう。しかし、司法試験や予備試験は難しい資格です。難しい資格だからこそ、価値があるのです。

次に、「大学1年生からの予備試験学習法」と「社会人からの予備試験学習法」を動画で簡単にまとめましたので、ご覧ください。

2、大学1年生からの予備試験学習法

3、社会人からの予備試験学習法