1、判例とは
予備試験、司法試験の学習で重要なものに、「判例」があります。
判例とは、裁判において具体的事件における裁判所が示した法律的判断のことを言います。
もう少し具体的に(予備試験・司法試験の勉強に合致するように言うと)、論点に対する結論と理由付けを言います。
論点とは、法律の解釈に争いがある点を言います。
例えば、刑法に強盗殺人罪という罪があります。
強盗が人を殺した罪です。当然ですが、法定刑は、死刑又は無期懲役という重い罪になります。
一方、刑法には「未遂」という概念があります。犯罪の結果が生じないときは、刑を減刑できるという規定です。
では、強盗殺人罪の未遂とは、強盗、すなわち財物の奪取が未遂なときをいうのか、それとも殺人の結果が未遂、すなわち人が死ななかった時をいうのか、という争いがあります。
これは法律の文言を眺めてもわからないからです。
これが論点になります。
判例は、この論点については「殺人の結果が未遂」であると述べます。
その理由付けは判例では必ずしも定かではありませんが、推定すると
「強盗殺人罪が重く処罰されるのは、人の生命を侵害するからであり、そうすると人の生命を侵害しなかった点を重視して未遂犯を決するべきだから」となるでしょう。
これが理由付けです。
2、判例は司法試験・予備試験の学習において大切なのか
これは大切としか言いようがありません。まず短答式試験では、判例の結論(場合によっては理由付け)が聞かれます。
また、論文でも判例の見解に従って書くことが求められることがあります。
司法試験・予備試験の学習にとっては、大事としか言いようがありません。
3、判例集をテキストの他に用意すべきか?
司法試験・予備試験の学習にとってはこちらの方が重大な問題です。
テキスト(予備校が出しているものや、学者が出しているいわゆる基本書を含む)は、判例の結論と簡単な理由付けくらいは載っています。
しかし、判例というのは本来事案も長いし、理由付けも長いことがあります。
そこで、その長い判例を読むために、テキスト以外に判例集が必要かという議論があります。
私は3つのグループに分けて考えましょうと言います。
(1)憲法・行政法(公法系)
→最重要
憲法・行政法に関しては判例集は必須です。なぜなら、短答式試験では、テキストの要約された判例の理由付けだけでは解けない問題が出るからです。判例集で長く事案や理由付けをマスターしましょう。
また、憲法や行政法は、法律の条文ではっきり規定されていることが少なく、判例が法律の穴を埋めています。その意味でも判例は重要です。
さらに、憲法や行政法の論文式試験では「あてはめ」が重要です。その「あてはめ」のお手本になるのが判例です。
(2)民事訴訟法・刑事訴訟法
→まあまあ重要
この2科目はまあまあ重要です。民事訴訟法や刑事訴訟法は、事案ごとに特別な事情があり、その事情を踏まえないと判例の結論が理解できないからです。また、「あてはめ」のやり方を見るのも重要です。
(3)民法・刑法・商法
→重要度は下がる
この3科目は、判例集自体の重要度は下がります。注意していただきたいのは、判例自体は重要ということです。ただ、この3科目は判例の事案や理由付けを長々問われることは少ないので、テキストでも十分判例をマスターできるということで、判例集はあまり重要ではないということになります。
この3科目に関しては、判例集は事案を見る、すなわち事例問題集のように使うのがよいでしょう。
なお、市販の判例集はいろいろありますが、やはり定番の判例百選が私はおすすめです。定番でもありますし、解説は司法試験・予備試験を意識して書かれています。
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