民法の特徴(初学者向け)

1、基本7法

本記事は、司法試験・予備試験の各科目の特徴を簡単に解説していきます。

予備試験・司法試験ともに、出題の中心は基本7法と呼ばれるものです。基本7法とは、民法・刑法・憲法・商法・民事訴訟法・刑事訴訟法・行政法になります。

2、民法とは?

(1)教科書的な理解

民法を教科書的に解説すると、私人間の権利義務と家族関係について定めた法ということになります。

これだけ聞いても、頭の中に???が並ぶだけでしょう。

(2)契約を中心に考える

民法で扱う典型的な場面は、契約です。(家族関係もありますが、それは少し横に置いておきましょう)。

例えば、AさんがBさんにマンションの一室を貸したが、Bさんが無断でCさんに又貸ししている。AさんはBさんにマンションを返せと言えるのか。

これは立派な民法の問題です。

民法の条文にはこのような規定があります。

第六百十二条 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
2 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。
 賃借人であるBさんが賃貸人であるAさんに無断で、Cさんに又貸しした場合は、AさんはABの賃貸借契約を解除(解約)できるということです。

(3)ルールの修正

ただ、法律の条文上は、無断で又貸しした(無断転貸といいます)場合は、常に解除できるように読めますが、判例がこのルールを修正しています。

それは「信頼関係破壊の法理」というものです。
例えば、Bさんが自分の成人している息子Cに貸した場合。

なぜ、無断転貸がいけないか。

それは、不動産の貸主は、借主を見て、「この人なら大丈夫だろう。家を大切に使ってくれるだろう。そして家賃もきちんと払ってくれるだろう」と考えて貸しているのです。

ところが、全然知らないCさんに又貸しされてしまえば、Cさんが家を汚したり、壊してしまうかもしれません。

そこで、無断転貸がされた場合には、貸主は賃貸借契約を解除できるようにしたのです。

ここで、Bさんが息子Cに貸した場合。BさんとCさんは一心同体と言えなくもないです(もちろんケースバイケースになります)。そして、BもCに貸さざるを得ない状況があるかもしれません。

そこで、Bさんが息子のCさんに貸した場合のように(家族に使用させることは予想できますよね)、貸主Aと借主Bの信頼関係を破壊しない場合は、AはAB間の賃貸借契約を解除できないとしたのです。

これを信頼関係破壊の法理といいます。

3、原則と例外

このように、条文を機械的に適用した場合に不都合が起こる場合、解釈で条文ルールを修正することがあります。これが、司法試験・予備試験でよく出題される「論点」というものです。

まずは、条文に書いてある「制度」を理解し、不都合があるときの「解釈」を学ぶ。これが民法学習において必要です。

4、契約自由の原則と任意規定・強行規定
(1)契約自由の原則

ここで、民法は契約について定めていると言っても、契約は「契約書」で定めるんじゃないのか?と思った方もいらっしゃると思います。民法の規定と「契約書」の内容について考えていきましょう。

民法の世界では、「契約自由の原則」というものがあります。これは、当事者任意で(つまり脅されたり騙されたりすることなく)契約をする場合、どんな内容の契約も自由にできるという原則です。

(2)任意規定(任意法規)

しかし、契約で決めなかった事項についてはどうなるでしょうか。契約で定めなかったことで、民法に規定がある場合は、民法の規定どおりになります。この規定のことを任意規定と呼びます。

例えば、お金を貸したが、返済期限を定めなかった場合、貸金はいつ返ってくるのでしょうか。
これは、民法の任意規定により「催告後相当期間経過時」、つまり返せと言ってからある程度の期間が経ったときに返済義務が生じます。

(3)強行規定(強行法規)

では、契約でどんなことを定めてもよいのでしょうか。実は、民法その他の法律の「強行規定」に反してはならないとされます。強行法規ともいいます。

例えば、契約自由と言ったって、あまりに高い利息でお金を貸すことは、利息制限法という法律で禁じられています。つまり、利息制限法の利息制限の規定は強行規定になります。元本の額が10万円未満だと、最高利息は年2割となります(利息制限法1条1号)。

いわゆる「トイチの利息」(10日で1割の利息)は違法となります。

(4)まとめ

契約で定めなかった時に使われるのが任意規定です。一方、強行規定に反する契約は定めても無効になります。

任意規定と強行規定について学ぶのが民法と言っても、民法の中心が契約である以上は、過言ではありません(もちろん民法には家族法など他の規定もあります)。

5、民法の短答問題

予備試験の民法短答問題を見てみましょう。

〔第1問〕(配点:2)
制限行為能力者の行為であることを理由とする取消しに関する次のアからオまでの各記述のう ち,誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。 (解答欄は, [№1])
ア.未成年者がした売買契約は,親権者の同意を得ないでした場合であっても,その契約が日常生活に関するものであるときは,取り消すことができない。
イ.成年被後見人がした売買契約は,成年後見人の同意を得てした場合であっても,その契約が日常生活に関するものであるときを除き,取り消すことができる。
ウ.被保佐人がした保証契約は,保佐人の同意を得てした場合には,取り消すことができない。
エ.被補助人が,補助人の同意を得なければならない行為を,その同意又はこれに代わる家庭裁判所の許可を得ないでしたときは,その行為は取り消すことができる。
オ.成年被後見人の行為であることを理由とする取消権の消滅時効の起算点は,成年被後見人が行為能力者となった時である。

1.ア イ 2.ア オ 3.イ ウ 4.ウ エ 5.エ

これは令和元年度の予備試験民法の第1問です。司法試験もほぼ同じ問題です。
答えは2番です。このように、民法の短答式試験は、条文や判例を具体的事例に適用して結論を出すという問題が多いです。

対策としては、講義やテキストで、民法の条文や判例を中心に制度を学ぶ、典型的な解釈を身に着ける、具体的事例にたくさん触れる、問題演習もたくさんする、に尽きます。

6、民法の論文問題

実際の予備試験や司法試験の問題は長いので、もっと簡単な論文問題を見てみましょう。

例)AはBに車を売ったが、当該売買はBの詐欺により行われたものであった。Bは当該車をCに転売した(車はCの手元にある)。その後、AはAB間の売買契約を取り消した。CがAB間の詐欺の事実を知らなかったし、知ることもできなかった時、AはCに車の引き渡しを請求できるか。なお、当該車は、未登録であることを前提にせよ。

雰囲気としては、予備試験や司法試験にはこんな問題が出ます。実際にはもっと長文の事例で、複雑なものが出ます。

これに民法の条文を適用し、解釈して結論を出していくということです。

7、司法試験・予備試験の中の民法の位置づけ

(1)典型的な解釈の技法を学ぶ場である

まず、司法試験・予備試験の中で、民法は最重要科目といってよいでしょう。理由としては、まず法律の解釈の基本的なテクニックが、民法にたくさんあるからです。ここで他の科目にも通用する解釈の技法を学びましょう。

(2)量が一番多い

次に、民法は最も量が多いということが挙げられます。量が多い科目を早めに制服することは、司法試験・予備試験の短期合格を狙うコツです。

(3)商法・民事訴訟法・行政法を学ぶ前提となる

さらに、商法や民事訴訟法、行政法などを学ぶためには、まず民法を学ぶ必要るということです。商法は民法の特別法なので、先に民法を学ぶ必要があります。民事訴訟法も、民法で定められた権利義務を実現する、民事裁判の手続に関する法律なので、先に民法を学んでおく必要があります。
行政法も、民法との対比をしなければ理解しにくい部分がありますので、民法先に学んでおく必要があります。